4_AI

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「何かがおかしい」  情報的な意味でさえ全裸になった<先生>=カヨコが、そう言った。宙空に腰掛け、カミソリのような脚線美を組んでいる。  初戦が終わった夜。少年たちは、生まれて初めての戦場で心身をすり減らし、深い眠りについているはずだった。  そんななか、ぼくだけは、彼女のプライヴェート・ルームに呼び出されていた。  残念ながら、色っぽい話じゃない。  近いのは、上司と部下、女王と斥候、作者と登場人物というところ。  ぼくは、掟の門番。  集団にひそむ、管理者の手先。  この仮想空間に走らされた、安物のAIがその正体だ。 「おかしいわよね。生徒のパラメータはほぼ横並びの筈。そうでなければ、戦略や戦術を学ぶことなんてできない。勇者がいればOKって話になっちゃうじゃないの」  そんなことを言われても、ぼくには答えようがない。 「ぼくの考えでは、担当プログラマは徹夜三日目くらいに突入しているね」 「バカ言わないで。一体どこでそんな知恵つけたんだか。わたしたちは政府から業務委託を受けたクリーンな企業よ。労働時間についてもきっちり管理しています」  全裸でいう台詞じゃない。社内ではどんな立場なんだろう。好き放題やっているように思えるが、実のところ、苦労の多い中間管理職だったりするのかもしれない。まさか、男ということはないだろうと思いたい。  ぼくがつけた知恵についてだが、ここだけの話、ぼくは読書家なのだ。形式の統一された大量のデータセットを取り込むのは、AIの十八番。なんなら、外部環境の読み込みを、読書に喩えたっていい。ぼくたちにとって、世界とは文字通り一冊の書物であり、それを読んでいるうちに、自分もその書物の一部だったと気づくものだ。
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