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翌朝、校庭に並ばされたぼくたちに、一律に〈ガン〉が支給された。黒いポリマーフレームのいわゆる短機関銃で、取り回しがきき、命中率の高いタイプ。みじかい牙のような銃剣も付いている。
ぼくは、金髪をなびかせる先生にガンを向けて、戦争なんてまっぴらだ、ぼくたちは使い捨ての兵士なんかじゃない、と叫んでみせるところを想像した。本当のところ、ぼくはすり減ったりしないのだが。
「本物みたいだ…」
という声が漏れ聞こえた。
集団のほとんどは、各地からランダムに集められた、中学二年生だ。お互いの呼び名はわかっても、プロフィールは知らない。関係構築もこれからだ。
「おい、えーと、〈ナツメ〉。あの小冊子、読んだか?」
うしろから声をかけてきたのは、きのう質問をしていた〈マサミ〉だった。軍服を着崩そうと努力したようだが、成功していない。
「個室に入ったらすぐ寝ちまって、読み損ねたんだ。このクソカリキュラムの説明かなにかだったんだろ?」
集団はすでに、校庭を出て、前線である曠野へ進軍をはじめていた。
お仕着せの古式軍服の列、おっかなびっくり担がれた銃筒。あわれな少年十字軍。
ぼくは、やさしく説明した。
「そうだよ。
"本カリキュラムでは、一般の情報環境とは隔絶した仮想空間において、擬似的な戦争を行います。教育効果は、実証されたものです。訓練により、みなさんはより忍耐強く、積極的で…"」
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