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……指折り数えた。彼が臥せってしまったから。
たぶん、彼はもう……。諦めなくてはならない。だけど、諦めたくない。
「何でないの?やっぱりここは……。」
彼のいた記憶の世界。私にはどうにも出来ない。あちらならば、薬だって市販品で済む。でも、この時代はそれすらままならない……。
私は彼の死を感じた。
「私はただ、あなたを知りたかっただけでした。……なのに、苦しいんです。こうなることはわかっていたのに。」
書けなくなる瞬間まで、文机にかじりついていた。すべてを懸けて描く、自らのこと。
なんて強く、脆い人なのだろう。涙が止まらなかった。
だから、伝えよう。最期だから……。
「さよなら。あなたが好きでした。」
絞り出したその瞬間、私の視界は光に包まれた。
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