第3話 時渡りし想ひの果て

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私はいつもと変わらない日常に戻った。 違うのは、毎日あの日を想い続けている心。 もう逢えない、本当は逢うことさえ叶わなかった人。 私は毎日、古本屋を巡る。 どこかにあの本が存在しないかと。 ある日、ふと立ち寄った古本屋の店頭本棚に、背表紙のない小さめの本を見つけた。 何とはなしに手に取ろうとする。 すると、反対側からもそれに手が伸びてきた。 思わず手が当たる。 「あ、すみません!」 「いや、こちらこそ。」 優しい声音の男性の声。思わず顔をあげる。 そこには、夕陽に照らされた優しい面立ちの男性が微笑んでいた。 ……私は知っている。この声も、あの口許も。 あり得ない、あり得るはずがない。 それでも、私の胸は痛いくらいに鼓動が早くなってゆく。 嘘だ、いや、そうであれ。 手にしようとした本が、するりと落ちる。 二人は気がつかない。 その本はひとりでにパラパラと捲れ、最後の頁の先の頁が少し重くなったかのように反発しながら……開かれた。 『時違えども君を想ふ。 この本が再び開かれたとき、また逢い見えんことを。 我が魂よ、君の元へ向かへ。時渡りて君を愛そう。』 ~~Fin
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