第1話 天使に出逢ふ

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━━彼女は現れたときと同様、突然現れては突然消える 人嫌いな私に彼女は異質であつた。 彼女が微笑めば私の心が躍り、温かい気持ちが支配した。 彼女は何かと私の世話を焼ひた。 腹が減ったなと思ふと、鼻を擽る香りがする。 顔をあげれば、盆を持ち、食事を私に差し出す。 これが美味かつた。実に美味かつた。 何故だらう?私は今まで孤独と共にあつた。 一人に慣れ、一人が当たり前で、すべてが煩わしかつた。 だのに彼女はしつこく何かを聞くわけでもなし。 何と間合いの取ることの上手きひとよ。 ただただ、私の執筆を見続けているのだ。 つまらないだらうに、ずつと笑つてるのだ。 世に蔓延るとも思えないような、粗悪な私の所業を優しく見ているのだ。 窶れ乾いた私の心の安らぎになるまでに、そう時間は掛からなかつた。
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