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「あ……ロンリーウサギだ」
「ろんりーうさぎ?」
「そのキャラの名前、ロンリーウサギっていうんだよ。友達がいつもカバンにつけてる」
ロンリーウサギは、一人ぼっちのゾンビウサギ。太陽の光が苦手で、いつも一人で暗い夜の中を遊んでいる。
一番好きな遊びは、ガイコツの頭でやるボウリングという設定らしく、眞希にこの話題を持ちかけると半日は、熱く語りはじめてしまう。
なので、彼の前でロンリーウサギの話をするのは禁止だ。
「そっか、このキャラがロンリーウサギだったんだ。教えくれてありがとう」
小夏さんは、ギュッとボイスレコーダーを握りしめた。
「あの……小夏さん」
「樹雨」
美術室の入り口から聞こえた、低くはっきりとした声に驚いた俺は、言葉を飲み込んでしまった。
入り口に立っていたのは、赤黒い髪色の男性だった。冬馬より身長が高いのではと思ってしまうほど、彼はスラッとした体形をしている。
男性は、俺の横をすり抜けると一瞬、敵を見るような目をこちらに向けた。
(あ……ピアス)
右耳だけでもピアスを三個つけているのを発見してしまい、ついその耳を見つめてしまう。
見つめられたのがイヤなのか、彼は眉をゆがませるとそのまま小夏さんの元へとむかい、彼女の物であろう荷物をつかんだ。
「樹雨、かえるぞ」
「うん」
彼の言葉に素直に従った小夏さんは、机から少し飛び出した椅子を机の下へとしまうと、彼と一緒に入り口へと歩いていってしまう。
「小夏さん!」
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