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「び、美術部に入ることにした!?」
「うん」
月曜日、みんながお昼ご飯をたべているなか、眞希の甲高い声が教室に響いた。お弁当をしまっていた眞希の手は、驚きのあまり止まってしまっている。
「陸斗が……び、びじゅつぶ……はら、はらいたい」
眞希の隣では、バン、バンっと机をたたきながら腹を抱えて冬馬は、笑っていた。
「とーおーまーくーん」
そんなに、俺が美術部に入るのはおかしいだろうか。
「すまん、すまん」
謝りながらも笑わないように口を手でおさえているが、肩は小刻みに揺れている。
「でも、なんで美術部?」
「あー……うん、ちょっと気になる子がいて」
「え、なに、すきな子?恋バナ?」
俺の気になる子発言に食いついてきた眞希の瞳は、キラキラと輝いている。
気になる子=恋、なんて方程式ができているあたり、本当は眞希は女の子なんじゃないだろうか。
「ちがう」
「じゃあ、なんだよ」
「……なんて説明したらいいか……うーん、その子の描く絵が好きで、でもその子ってなんか、ほっとけなくて」
「よくわかんねぇけど、とりあえずすきな子目当てで入部するってことでいいか?」
小夏さんのことを説明するのが難しかった。考えながら話すとしびれを切らしたのか、冬馬のおおざっぱな理解に、ため息をついた。
「……もういいです、それで」
「……ひとつ、いい?」
「なに?」
「陸斗くんって、絵って描けたっけ?」
「…………」
しん、と教室が静かになった気がした。実際は他の生徒は教室にいるし、しゃべったりご飯を食べたりしているのだが……。
「……陸斗、ちょっと描いてみろよ」
「うん」
冬馬からルーズリーフとシャーペンを受け取り、俺はペンを動かした。
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