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5分後。
「…………」
「なんだこれ」
「……一応、眞希のすきなロンリーウサギのつもり、です」
「ロンリーウサギは、こんな怪獣じゃない!」
出来上がったのは、あまりにもヒドい絵だった。手足に見立てた4本の線、いびつな円が並び、そこに描かれた瞳らしきものはぐちゃぐちゃに描かれている。
美術部に入りたいと言った高校生が描いた絵とは思えないものだった。
「うさ、うさぎ……ひぃ、みえねぇ」
眞希はあまりのヒドさに見ていられないと顔をおおい、冬馬は涙を流しながら笑っている。
「にてない、かな」
「似てないよ」
「俺のがもっとうまく描ける。みてろよ」
そう意気込んで同じルーズリーフに描き始めた冬馬は10分後、机に背を向けていた。
「…………」
「あれ、うまく描けるんじゃなかったっけ?」
冬馬が描いたロンリーウサギは、陸斗よりはウサギの形をしているがうまいとは言えないようなものだった。何故かウサギの隣に『オレ、ロンリー』と書かれている。
「スミマセン」
「オレ、ロンリーって、なに」
「スミマセンデシタ……でも、陸斗よりはうまいと思う」
「もう、2人ともだめ!ロンリーウサギは、こう」
バンッと効果音がつきそうな勢いで、眞希が見せた紙には、ガイコツで遊ぶロンリーウサギの絵が描かれていた。
元の絵よりかなりカワイく描かれている気がするが、三人の中では群を抜いてうまい。
「おお!眞希、優勝」
「さすが、眞希ちゃん」
「俺らに足りなかったのは女子力か」
「それだな」
「2人とも、怒るよ」
「ゴメンナサイ」
今度は別のお題で何か描こうか、と再びペンを握った。その時……。
「なぁ、木下 陸斗っているか?」
アイツが、現れた。
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