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「なぁ、木下 陸斗っているか?」
赤黒い髪に、左耳に4つ右耳には3つのピアスをつけたその人が教室の出入り口に立っていた。
(左のピアス……ふえてる)
クラス中が彼に注目している。
しかし彼は、視線を気にすることなく教室の隅から隅まで見渡し、お目当をみつけるとニヤリと笑った。
「いたなら、返事しろよ」
「…………」
「陸斗くん、しりあい?」
眞希が、おびえたように俺の服の裾をつかんでいて、冬馬は怖いくらい彼をにらんでいた。
「樹雨が、美術室で待ってる。話したいことがあるってさ」
「小夏さんが……」
待ってる。
窓辺に立ち、ひとり空を眺める彼女の姿を想像したら体が勝手に動いていた。
音を大きく響かせながら立ち上がり、足を大きく一歩動かした。
「陸斗くん!?」
「陸斗、どこいくんだ。そいつとは……」
「ごめん、2人とも……あとで説明する」
不安げにこちらを見つめる2人に、そう伝えると俺は彼の隣に立った。
「いくぞ」
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