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「おはよう、陸斗」
職員室からそのまま教室へとむかう途中、とつぜん後ろから声をかけられ振り向く。朝から明るい声で俺に話しかけてくるやつは、アイツしかいない。
「冬馬、おはよう。朝から元気だな」
「おうよ、なんたって今日は豚のしょうが焼きを食べてきたからな。スタミナは、ありあまってる」
「朝から肉料理か」
人懐っこそうに笑った彼は、早坂冬馬。身長が183センチと高く、その高身長をいかすためかバスケ部に入部している。
冬馬とたわいもない会話をしつつ、教室の入り口をひらくと、教室にいた数名がこちらをむいた。
気まずげに向けられる視線をムシして、窓際の席に座り手をふる友人のもとへと向かう。
「おはようー陸斗くん、冬馬くん」
ふんわり、とまわりに花が舞っているかのように笑う彼は倉谷眞希。裁縫や料理が得意な彼は、クラスの女子より女子力が高い男子だ、たぶん。
「傘、もってきた?」
「傘? 雨でも降るのか」
「午後から降るんだって、天気予報みなかったの?」
「みない」
「みないな」
顔を見合わせて答える陸斗と冬馬に、真紀は呆れたとでも言うように深くため息をついてみせた。
朝は、バタバタとしてしまって天気予報を見る習慣など身についていない。
「天気予報くらいみようよ」
「むしろ、テレビをつけない」
「冬馬くん、そこから!? もう、しかたないなぁ」
眞希は、カバンをがさごそとあさり始めた。眞希のカバンには、フワフワしたファーのチャームとウサギのゆるキャラが付いている。
「んー、折りたたみ1本だけしかないや。2人とも部活は?」
「俺は、体育館だしフツウにあるなぁ。陸斗は?」
「……おれは」
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