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なかなか答えない俺にたいして、2人はお互いに顔を合わせると眞希は、小首をかしげ冬馬は、眉を寄せてこちらをみた。
「やめたんだ、陸上」
「は!?」
「え……」
「さっき、退部届け出してきた」
心配をかけぬよう、笑顔でそう伝える。ちゃんと、笑えているだろうか。
「なんで……っ」
「眞希! ……やめろ」
泣きそうな顔で問いかける眞希を冬馬がさえぎった。
「ごめん」
「いや……」
顔を下にむけて謝る眞希に、俺は気にしていないとゆっくり左右に首をふった。
2人には、気を使わせてしまい、もうしわけなく思う。
でも、辞めたことをいま話さなくてもいずれ、話す時がきていただろう。
「足、そんなにヒドいのか?」
「いや、歩くのには問題ない」
「そうか、ならいい。けど、ムリはするなよ」
「ごめんな」
「べつに、謝らなくていい」
しんみりとした雰囲気が3人を包む。ガヤガヤと教室がさわがしくなった気がした。
「傘、どうしよっか」
「あー俺、部活のメンバーに借りるか、入らしてもらうから陸斗使えよ」
「いいのか?」
「いい、いい。問題ない」
「ごめんな」
「だから、謝んなって」
眞希から空色の折りたたみ傘を受け取ると、タイミングよくチャイムが鳴った。俺と冬馬は、あわてて自分の席につく。
空は、灰色の雲におおわれていた。
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