第1話 ごめん

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 なかなか答えない俺にたいして、2人はお互いに顔を合わせると眞希は、小首をかしげ冬馬は、眉を寄せてこちらをみた。 「やめたんだ、陸上」 「は!?」 「え……」 「さっき、退部届け出してきた」  心配をかけぬよう、笑顔でそう伝える。ちゃんと、笑えているだろうか。 「なんで……っ」 「眞希! ……やめろ」  泣きそうな顔で問いかける眞希を冬馬がさえぎった。 「ごめん」 「いや……」  顔を下にむけて謝る眞希に、俺は気にしていないとゆっくり左右に首をふった。  2人には、気を使わせてしまい、もうしわけなく思う。  でも、辞めたことをいま話さなくてもいずれ、話す時がきていただろう。 「足、そんなにヒドいのか?」 「いや、歩くのには問題ない」 「そうか、ならいい。けど、ムリはするなよ」 「ごめんな」 「べつに、謝らなくていい」  しんみりとした雰囲気が3人を包む。ガヤガヤと教室がさわがしくなった気がした。 「傘、どうしよっか」 「あー俺、部活のメンバーに借りるか、入らしてもらうから陸斗使えよ」 「いいのか?」 「いい、いい。問題ない」 「ごめんな」 「だから、謝んなって」  眞希から空色の折りたたみ傘を受け取ると、タイミングよくチャイムが鳴った。俺と冬馬は、あわてて自分の席につく。  空は、灰色の雲におおわれていた。
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