第2話未完成、なのか

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「はぁ、はぁ…… っ」  少し足を速めたくらいで、息切れしてしまう。体力が落ちたのを悔しく思いながら、俺は美術室へとたどり着いた。  閉め切られたドアに手をかける、乾いた喉をゴクリと潤すとドアを一気に開けた。 「……あ」  薄暗い部屋の中、ポツリと立てかけられたキャンバスは……なかった。かくり、と肩から力が抜ける。 (当たり前か)  あれから時がたちすぎた。そこにないのは、当たり前だ。あると思っていた数秒前の自分が恥ずかしい。  帰ろうと、視線を窓からうつしたとき、鮮やかな虹が見えた気がして美術室の後ろに視線を戻す。 「……あった」  あの時と何も変わらず、石こう像などの美術の備品と一緒にあったその絵に、ホッと息をはいた。 「……変わらない?」  俺が見たあの時とその絵は、なにひとつ変わっていない。  そのことに気づいた瞬間、心臓がドキリと大きく動いた。置いていかれたと言っているかのように、その絵は寂しげに置かれている。  おそる、おそるキャンバスへと手を伸ばす。ふるえる指先がキャンバスに触れると、絵の具でできた微かな凹凸が伝わった。 「見放されたのか……?」  つぶやきに答える声はない。ザァーと降る雨の音を聴きながらその未完成の絵を眺め続けた。
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