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Fiction _攻略失踪ルート
西山貴文
~ 妻となるべき人へ ~
<Youtube>
音楽動画_「アリアドネ」
――愛の言葉で君を奪えるならもっと早く伝えておけばよかった。こんなに混線する前に。
解くのは此方の仕事。
<あれからの日々の想定_失踪ルート標準>
<女の華道_ハイソな女のヒステリー>
そんな日々を過ごす間、よくYouTubeで音楽動画を見た。楽しみでもあり、気晴らしでもあった。最近の音楽動画は絵やアニメーションを動画とした音楽動画も多い。その時見たのも、そんな音楽動画の一つだった。
よく見ると知った女性のイラストレーション。作者がではなく、題材にされているのが知っている女性のように見えた。素人の作品ではない、商業作曲家の作品だった。だからかえって気付かなかったのかもしれない。間違いない、とまでは言えない。だがそこに描かれているのは彼女で、歌われているのも彼女だった。
ポップスだから、というのもあるのだろうが、むしろ、作曲家のメッセージを作品に感じた。妄想といえば妄想ではあるかもしれないが。
結婚したという噂は聞いていた。きっと其れまでの或は其れからの生活を描いているように聞こえた。
そうしてYouTubeを見ていて発見したのがとあるAV女優、姓が同じで名が異なる彼女と同年代ぐらいの女性だった。拙作のキャラクターと一部同名の女性だった。
何故その子と彼女を同一視したか。決め手は「声」だった。
容姿は似ている女優と似ていない女優がいた。
「声」
アフレコの声優でも始めたのかと考えた。
何れにせよ確かめて見なければ判らない。
翌日確かめて見ることにした。
職員の人には以前にも数度尋ねていた。同じ施設の中でも部署が違ったので知らなかっただけなのかもしれないが、「知らない」と言う回答だった。
余りにも腑に落ちなかったので、元同じ部署の同時期の同僚に尋ねて見た。主任クラスの人だった。回答には若干の時間が掛かった。曰く個人情報法保護だそうだ。やはり別の部署に未だ務めているそうだった。確かめることにした。
ハーフ終了後本館に移動し、当該の部署に前に立った。
心理室。
凡そ4㎡程の部屋の中に彼女は居るらしかった。
ノックをする。
「恐れ入ります」。
「はい?」
「此方に安桜さん、いらいっしゃいますか?」
「少々お待ちください」。
少し開けたドアの向こうに安桜さんが現れる。
「安桜さん?」
「こんにちは」
「お久しぶりです」
出てきたのは白い上着を着た小柄な若い女性だった。
「覚えていらっしゃいますか?」
一年半は会って居なかったのだから忘れていても不思議はない。一年半は人生の十分の一ぐらいに匹敵する。そんな若い相手だ。
この文章の前半は既にネットワークに投入済み。此方の意図は同僚の質問とも相まって了解されていたかもしれない。とか、考えていたので、好きとか、伝えらたか、あまり記憶していない。テンションが上がっていたのかもしれない。
会見は三分もしない内に終わった。
安桜さんは現在も健在。安否確認好し。そう思って引き揚げた。が。
何処か以前会っていた彼女とは違う印象。
久しぶりに会った事に関するあいまいな返答。
確認できない名前、未来、ミナミ。
帰ってから思い返して振出しに戻ってしまったことに気付く。只、心理室に安桜さん、年の頃が同じの若い女性がいること迄は確かになった。
確認しなければならないのは、青空にスタッフとして居たかどうか。
その時私に、何と名乗ったか。
転属寸前、「ミナミちゃんですよぉ」と私の方へ言ったかどうか。
「ミナミちゃん」ならば冊子の名は何故未来か?逆もしかり――
実は二人以上居るんじゃないですか?
「南無妙法蓮華経と我も唱え他をも勧めんのみこそ、今生人界の思い出なるべき」
(持妙法華問答抄)、覚えていらっしゃいますか?
宿命転換しないと絶対脱出出来ません!
三度目の突撃は明日20230928木曜日。
BGM 「本当は夜の端まで、」 / MAISONdes
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