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14 <犯行現場>
#15
Monologue
誰が、何を行ったのか。これには大体見当が付いている。防がなければならない犯行の内容は。概ね、強姦だった。そうして、彼女の登場以降まずなすべきは、張り込みと尾行だった。この行動の順序は先ず尾行、しかる後に張り込みに成る予想だった。故は彼女の立ち寄り先と自宅を知るのにまず尾行が必要で、立ち寄り先と自宅が判って始めて張り込みが可能だからだった。
彼女の就業時間と終業時刻を知る必要があった。
施設の内部にいられるのは私の場合、今まの処昼までだった。
「お先に失礼します。」
「お先に」
――
三々五々午前ハーフの人が帰りだす。
午後もの人は昼食の準備に入りだす。
職員がテーブルを殺菌し始めた。
今日は彼女の姿を見ていない。
帰りにはスタッフルームに寄って挨拶して帰るのが常だったが、あまり期待はしていなかった。居無い。そんな気がした。
ノックをする。
中の職員がどあをあける。
「お先に失礼します。」
「お疲れ様です。」
今日は、休みらしかった。
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#16
犯行現場
悪役の描写と言うのは難しく、当人の悪がよく把握できていないと、返って滑稽なキャラクター描写になってしまう。事件が事実であり、憎むべき行為である限り、犯人像はリアルに憶測無く、その悪を描くものでありたい。犯人が憎いから。
およそ犯行は知人の範疇から入り、若干の脅迫めいた威圧によって相手の自由を奪い、突然有形力の行動阻害、押し倒すとか、に及んだものと思われる。犯人が複数だったかは、不明である。
血中から採取された反応から薬物の使用が認められた。被害者に薬物使用歴は、ない。
遺書の類はなく、衝動的なことだったと思われる。
伝聞ではそう聞いている。
防ぐべき事件の、日常に比する、凶悪さが解る。
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仏のいみじき――と友情団結勝利
#17
どうやって防いだものか。
二度にわたって時間粗鋼には失敗した。
そもそも遡行するものではないのか?
目が覚めると二年前だった、というわけには中々行かなかった。
どうやっても時間は止まんないし。
どうやってもうまくいかない。
出来事をオセロのようにひっくり返すのは難しい。
たとえ道理が有ったとしても。
ため息をついて、打鍵していたら後ろから声が掛かった。
‟その話請け負った‟
学生に見えた。
”いつ”
犯行は何時行われたのかか。
”2021”
”結構きついな”
”味方は居ると助かる”
冗談だったのか、当てにしたら、
”ヤーザク相手に学生に何ができる?”
”大石寺なら道理を”
”いや、そっちじゃなくて”
”そっか。敵は外道か”
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男女交際
#18
都内某所。
ダウンタウンの一角。
メゾンデの「本当は夜の端まで」がラウンジに掛かっている。
「悪くないでしょ?」
「そうですね」
「個室あるんだけど」
「……遠慮しておきます」
宣伝されていない秘密の宿泊施設。
それがこの町の秘密の一つだった。
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