1話 ずっと憧れの人

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「痛いっ!脇がかまいたちに!」 「肌が弱いんだね、人魚って生臭いんだ」 「打ち上げられて少し傷んでいるのです」 「腐敗が始まって、そこへ王子がやって来たのか」 「はい、人間の体温は高いので鱗だった足の部分が大やけどしました」 「上半身は人間でしょ?あなたの手で自分の足を触るとやけどしないのですか?」 「大丈夫です。長時間海底に居ると上半身冷えちゃって、そしてふやけちゃって 海底でも浜辺でもビジュアルを維持するのが大変なのです・・・」 はははと会場から、まばらに笑い声が聞こえてくる 今日は学園祭 1年2組の前座のコントは浜辺にちなんだものばかり 「この子可愛いな」 「この子イケメン~」 ご父兄の方々もカラーカードをそれぞれの小さなBOXに差し込んだ 1年3組のプリンスとマーメイドのグランプリは入り口パネルでの投票制で iPadで事前に撮影した動画も流れている 「急ごう」 1年3組の実行委員がBOXを回収して 最後のコントが終わるまでに集計をしに舞台裏へと急いで移動した 体育館入り口には、浜辺の波打ち際を描いたパネルが飾られていて BGMには波の音が流れている 海賊船へ乗船するというコンセプトでの1年1組の演出なのだ 焼きそばやコロッケを持ち歩いている他校生たち どっきりハウスの呼び込みの声が聞こえる どこからかスイーツの甘い香りも漂って来た 手作りの店員の制服と机や椅子の簡単な舞台セットを準備して 最後のコントが始まった 「井手です」 「テテです」 「「ふたり合わせてイテテテです」」 最後のコントで舞台裏は慌ただしい 「ピザとタバスコください」 「はいどうぞ」 「一枚のピザに4本っ!タバスコ多いな~」 会場からフフフと微かな笑い声が聞こえる 集計の結果が出た 「きみ、もしかして留学生?」 「龍がクセエ?」 会場からプププと身内だけの笑い声が聞こえる
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