1話 ずっと憧れの人

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外で待機していた実行委員の誘導で グランプリにエントリーしていた人たちが 衝立で隠された入り口からこっそり入って来て 1年3組の実行委員が段取りを説明すると舞台袖で整列して待機した 「いやいや、ボクが質問しているんだよ」 「日本語お上手ですね」 「日本人です」 フフッとコンビにゆかりのある人達だけの笑い声が聞こえる 二人の一切浜辺にちなんでいないコントに 「そこどこ~!」 「浜辺は~?」 「浜辺は~!」 ヤジが飛び 「「ここは、浜辺のイタリアンレストラン~」」 最前席でクスクスと、親兄弟の笑い声が聞こえる 「無理やり~!」 「むりやりやぞ~」 「「イテテテでした~」」 もう、誰も笑っていない 舞台袖から出てきた1年1組の太田くんは、 マイクを片手に、時折左手に持っている白い紙を見て壇上から見渡すと 「みなさん! 楽しんでいますか~! バラエティに富んだコントおもしろかったですね~」 「太田~! 面白いこと言え~!」 太田くんは、ヤジを叫ぶ生徒を真顔で見つめた 「・・・・・」 割腹の良い太田くんは動じない 「はい、面白いことは言えません」 静まり返った会場で、数人の父兄が笑った 「わ~! たくさん見に来てくれてありがとうございます グランプリの集計が出ました!」 登壇して整列したグランプリのエントリー者たちは手を振る者や恥ずかしがる者 会場から声援を浴びる者と一気にステージが華やいだ 「投票の結果! 浜辺のプリンスグランプリは・・・ 浜辺のマーメイドグランプリは・・・ に決定です! おめでとうございます!」 キャーキャーと会場からの女子たちの悲鳴に 何ごとかと、父兄たちがキョロキョロと辺りを見渡している 優勝者のふたりがそれぞれポーズをとって 贈呈式が終わり 司会の太田くんと共にステージを去る頃に ザワザワと色めき立った コントより グランプリより これだけ体育館が賑わっているのには、訳がある ドンドンドンドン ステージの両サイドのスピーカーから 大きな鼓動が聴こえてきた 緞帳の中から聴こえるリズム 幕が開いた瞬間から広がる別世界
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