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「まずはガソリンを入れないといけないんだっけ」
笠原の言葉を思い出し、日出は燃料計に視線を移す。メーターの針はEの位置を指し、すぐにでも給油が必要だと訴えている。
道路沿いにセルフのスタンドを見つけると、比較的空いている端の方にS14を止める。
「シルビアってハイオクだっけ? ……でもこれはQ’sだからレギュラー……?」
なんで乗り出す前に調べておかなかったんだろう。日出は後悔しつつも、愛車の説明書を開く。幸いにもこの時間帯は利用者が少なく、彼女がゆっくりと調べていても邪魔にはならないのだが、免許取り立ての彼女である。他のドライバーにクラクションでも鳴らされないかと気が気でならず、慌てながらページをめくり、該当箇所を見つけ出した。
「……よかった、ハイオクかぁ……」
説明書を急いでグローブボックスに戻すと、給油口を開き、ガソリンを入れるために給油機に向かう。慣れない手つきで機械を操作し、満タンを指定してノズルを手に持つが、そこで日出は自らがもう一つのミスをしていたことを知り、泣きそうな顔をしてへたり込む。
「給油口、逆じゃん……」
慌ててノズルを戻し、給油口を閉めるとS14を方向転換させる日出。今度こそ正しい向きで停車させると、再び給油を試みる。
「はぁ……バイクに乗ってた時は給油口の向きなんて気にする必要なかったもんなぁ……」
自らの経験不足を恥じながら、日出は愚痴をこぼす。
満タンを検知した給油機が自動的に給油を止めたため、日出はノズルを戻し、給油を完了させた。
「あー……恥ずかしかったなぁ……」
スタンドを去り、街中を走るS14の車内で日出はまだ先ほどの失敗を思い出していた。
「給油口は運転席側、ガソリンはハイオク。絶対忘れないようにしておかないと……」
まるで漫画のように顔を真っ赤にさせ、一人念仏のように唱えている少女。その姿に他のドライバーが気づいていれば思わず笑ってしまっていただろう。
「あーもう! いつまでもさっきのことばかり考えてても仕方ないよね! 次、次いこう!」
オーバーリアクション気味に頭を左右に振ると、日出は次の目的地を目指す。
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