始動

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 水曜日。閉店一時間前のリバプールにて。 「姉ちゃん、クーポン使える?」  ドリンクバー無料のクーポンをひらひらと振り、注文を取りに来たウェイトレスに見せる明日香。  それを見たウェイトレス――里沙は顔を引きつらせ、無理に笑顔を作りながら接客する。 「お客様、こちらのクーポンは使用可能ですが、本日はどのような嫌がらせをしにいらしたのでしょうか?」 「アホ、客としてきただけや。まあ、里沙に話があんのも事実やけどな。じきにあがりやろ? 飯食いながらドリンクバーで粘らせてもらうわ」  笑いながらクーポンを差し出す明日香の手から、乱暴にそれを引ったくる里沙。  彼女は注文を取ると、また慌ただしい仕事に戻っていった。   「それで? 一体なんの話なんです?」  閉店後のリバプール駐車場。  CR―Xのフェンダーに腰掛け、明日香に問う里沙。  その問いに、明日香は煙草をふかしながら、まるで自分のことのように、嬉しそうに答える。 「こないだ日出から電話があってな。金曜にS14仕上げるらしいわ」  その顔には笑みが浮かび、さながら誕生日を待ちきれない子供だ。 「金曜、か……。アタシは昼間からシフト入ってて無理だけど、チームの連中に応援できないか聞いてみます」  どうせ暇な連中だし、誰か一人くらいは行けるでしょと、里沙はいつものように笑う。
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