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「まさのぶー。こんな若くてかわいい子をゲットするなんて、おまえはズルい! どうしてこんな奴がモテるんだ?」
家庭のある人や明日が仕事の人はすでに帰った後で、誕生日パーティーに残っていたのは6人の男性と佳乃さん。
すっかり出来上がっている門倉さんが絡むと、雅信さんは露骨に嫌な顔をした。
「”モテる”っていうのは複数の女性から好意を持たれることだろ? 俺はこいつだけだからモテるとは言わない」
雅信さんが私の肩を抱き寄せたから、何人かが口笛を吹いてからかった。
――今晩、このパーティーに来て良かった。
バーに足を踏み入れると、すぐに私に気が付いた佳乃さんが駆け寄ってきた。
思わず身構えた私を見て彼女は申し訳なさそうに眉を下げた。
「この間はごめんなさい。失礼なことを言って。言い訳にもならないけど、大きな商談を他社に横取りされてムシャクシャしてたの」
私に謝るために残っていたらしい佳乃さんは、思ったよりも悪い人じゃなかった。
門倉さんが私にボディータッチしようとしたのをピシャッと叩いて守ってくれたし、雅信さんとも特に親しいわけじゃなく、皆と下の名前で呼び合っていた。
そして、何より雅信さんが皆に私のことを「付き合ってる子」と言って紹介してくれた!
隣の席の柳川さんが言うことには、雅信さんは正真正銘の独身で、バツはついていないし子どももいないそうだ。
そもそも私が思うほど雅信さんはモテないそうで、その原因はあの偉そうな言動と理屈っぽい話し方にあるらしい。
「確かに私も第一印象は最悪でした。何様?って思って」
私がそう言うと、佳乃さんが寄ってきて私たちの馴れ初めを尋ねて来た。
「2次会で自己紹介程度の会話を交わした後、無理やり連絡先を交換させられて。おまえは俺と交際しないと不幸になるって脅されたんです」
これを話すとたいてい爆笑される。霊感商法かって。
で、今も目の前の酔っ払いたちはウヒャヒャと笑い転げた。
「脅して付き合わせたんだ? 雅信らしいっちゃらしいな。君のこと、生意気で時々殺したくなるほど可愛い女だって言ってたよ」
こっそり教えてくれた柳川さんのコップが空いたことに気づいてお酌しようとしたら、雅信さんに止められた。
「おまえは俺だけを見てればいいの」
そんなセリフを耳元で囁かれてドギマギしている私を、雅信さんは満足そうに見つめた。
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