シンデレラはパーティーに向かう

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別に自分の仕事を卑下しているわけじゃない。 肉体労働ではあるけれど、クリーニング師という国家資格を持つ技術職でもある。 誇りは持っているけど、世間的には私の仕事は多くの人に見下されているように感じる。 だから、私は初めて会ったときに、雅信さんに嘘をついてしまった。もう会うこともないだろうと思っていたから。 笠井市の大手信販会社で事務の仕事をしている。 そんな嘘が咄嗟に口をついて出たのは、高校時代の友人がその会社で働いていて、少しは事情を聞いていたからだ。 個人情報を取り扱う仕事だし、ちょっとした仕事の愚痴でもネットで広まれば会社が潰れかねない。 だから、仕事の話は社外の人には出来ない。たとえ恋人でも。 それは”嘘の仕事”に最適だった。 東京の大手シンクタンクで企業や官公庁向けのコンサルティング業務を行っている雅信さんに、少しでも釣り合うような彼女のフリをしたかった。 通勤中の車内では音楽ではなくラジオのニュースを流して、雅信さんとの会話でボロが出ないようにしている。 興味のなかったファッション誌も買って、垢抜けた大人っぽい服を買うときの参考にしている。 それでも、やっぱり雅信さんから見たら、私なんか地方都市で働く野暮ったいOLに過ぎないのだろう。 2人で過ごす週末はほとんど雅信さんのマンションで過ごし、人目に付くような場所でデートすることなど滅多にない。 その滅多にない私の誕生日のデートで、佳乃さんに声を掛けられたんだから皮肉なものだ。
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