好奇心が猫を殺す

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「ムリしなくていいよ。 きっと引き取り手がいないんだろ?」 「うん」 なんとかすると言いながら、 アテがあっての発言ではなかった。 彼は白い息を吐き出した。 「そんなことはしないだろうけど、遠くに捨てたとしても、猫には帰巣本能がある。 それに途中で車に轢かれても可哀そうだ」 「しないよ」 啓一から、可哀そうという言葉が出た。 もしかしたら、猫を憎んでいるのではないかと思っていたのだけど、誤解をしていたのだ。 「それから」 彼は河の方を指さす。 「水に沈めたりするのは動愛法でいうところの虐待になる」 「するわけないって」 「それに猫ってなかなかしぶといから、あのぐらいの河なら泳いじゃうからね。 外国には猫には九つの命があるって諺もあるぐらいだよ」 「うん」 しらすを思い浮かべてみたが、あのやせっぽっちのサバトラがそれほどしぶといとは思えない。 「ちなみに保健所は、飼い猫は引き取ってくれない」 「そうなの?」 「野良なら犬も猫も引き取るけど、誰かが飼っている動物を処分するとなると色々面倒事に発展する場合があるからだろうね」 「なるど、たしかに」 保健所だけじゃなく、今彼が言ったことのどれもわたしにはできるはずがない。
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