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彼が猫アレルギーだというのはウソだ。
意識的についているウソではなく、きっと彼自身もそう思い込んでるのだろう。
猫の毛を吸い込むと、アレルギー反応で気道が狭くなり、呼吸ができなくなるらしいが、それは本当のことでない。
彼が初めてこの部屋に来た時、うちの飼い猫のしらすはコタツの中にいた。
猫がいるとは知らない部屋で、彼は鍋をつつき、くつろぎ、それからコトに及んだのだ。
極端に人見知りなしらすはその間、こたつの隅で丸くなり、一度も顔を見せなかった。
広くはないワンルームマンションだ。
アレルギーがあるなら、しらすが出て来なくても異常は出ただろう。
もしかすると彼自身も知らないうちに治ったのかもしれない。
そういうことはたまにあるらしい。
彼から猫アレルギーがあると聞かされたのは、二度目の訪問の時だった。
前の時には気付かなかったエサ皿に、彼が目を止めたのだ。
「猫、飼い始めたの?」
彼の問いに、なぜか前からいるということが言えずに頷いてしまった。
「オレ、猫アレルギーなんだよね」
その日は外で食事をし、ホテルを利用した。
それから彼が部屋に来る時には、しらすにクローゼットに入っていてもらう。
彼にはその間は実家に預けていると言ってある。
効果があるかどうかも分からない空気清浄機も設置した。
彼が来ていない日、稼動していない空気清浄機の天板は、しらすの定位置になっている。
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