好奇心が猫を殺す

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「やっぱり猫、何とかしてくれないか」 ある日、彼が言った わたしがユニットバスから戻ったところで、彼は脱ぎ捨てていた服を着ているところだった。 “何とか”という言葉の冷たさにショックを受け何も答えられないでいると、彼が続けざまの空咳をした。 「でも啓一が来る時には預けてるんだから……」 「ほとんどない休みだから、予約なしでは来れないってのも不便なんだ」 彼、滝啓一は大学病院の研修医だ。 勤務は早朝から深夜までで、休みは月に二、三日あればいいほうだ。 その休みですら、途中で呼び出されることもあった。 「それに猫自体がいなくても、毛が残ってるみたいだし」 彼が喋る度に、ひゅーひゅーと笛のような音がしていた。 それまでは大丈夫だったのに、この日は調子が悪そうだった。
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