好奇心が猫を殺す

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その滝先輩と 街で買い物中にばったり再会したのは半年前のことだ。 彼は研修医になっていた。 懐かしいと、食事に誘われた。落ち着いたダイニングバーでアルコールが入ると、実は高校の頃に好きだったと言われた。 とても信じられなかったが、彼が自分に好意を持っていてくれたなど、嬉しくないわけがない。 過去のほのかな恋心は、現在のプラクティカルな恋愛感情に上書きされた。 そして別れ際には、手を握られた。 「実はあの頃ずっと、こうしたいと思ってた」 何も反応ができず固まるわたし。 拒否と受け取られたのか、滝先輩は慌てたように手を離した。 「ごめん、ちょっと酔ったみたいだ」 状況を理解するよりも先に、離れた彼の手をもう一度握りたいと思った。 思いは、ためらいを跳び越えて、行動になった。 わたしは彼の手を握って言った。 「い、今はこうしたいとは思いませんか?」
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