好奇心が猫を殺す

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「ねえ、少ない時間なんだから、自分のために使ってね。 わたしは週に一度、電話で話せれば十分だから」 研修医というものの過酷さを知って、ある日そう言ってみた。 敬語を使わないことや、啓一と下の名前で呼ぶことにようやく慣れてきた頃だ。 わたしの部屋でこたつで向かい合って豆乳鍋を食べていた。 飲んでいるのはいつ呼び出しがかかってもいいようにと、ノンアルコールのビール。 再会したあの日以来、啓一がアルコールを口にしているところを見ていない。 鍋は彼のリクエストによるものだ。 「鍋は幸せな気分になれるから、自分が来る時はいつも鍋にしてほしい」と彼は言った。 それが料理が得意ではないわたしへの配慮であることは分かっていた。 だからせめてもと、わたしは鍋のレパトーリーを増やすことに専念していた。 「お前といることが、一番の自分のための時間の使い方なんだよ。 お前はオレにとって趣味と実益を兼ねた存在だ」 「趣味と実益」 彼の言い草にわたしは思わず笑ってしまった。 「それにこうして美味い鍋を食べることが滋養にもなる」 わたしはこたつを回って彼のところへ行き、キスをした。 こたつに足を突っ込んだ時、しらすに当たってしまったが、しらすは声をあげることもなく反対の角に移動したようだった。 そこで彼が少し困ったように言った。 「だけどひとつだけお願いがある」 「うん、なに」 「コタツは対面じゃなく、L字の位置に座りたい。 そうしたらキスしたくなった時に、わざわざ移動しなくてもできるから」
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