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雄鶏が逃げて行った養鶏場で、悲劇が起きた。
ゲージのニワトリ達が、高病原性の鳥インフルエンザに感染したのだ。
直ぐ様、ニワトリ達は防護服を来た者に悉く全員殺され土の中深く埋められた。
ニワトリの居なくなったゲージには、撒かられた消毒液の匂いが立ち込めていた。
雄鶏は、この悲劇を風の便りで知った。
鳥インフルエンザにかかって殺された雌鶏の中に、ヒヨコの選別でシュレッダーに擂り潰されそうになったとこを、命からがら逃げていったこの雄のヒヨコを心の中で応援していた者もいたことも。
そして、鳥インフルエンザを媒介したとして近くの沼地の渡り鳥達が人間に悉く駆除され、全滅したこともだ。
雄鶏は、それら全ての『命』を背負って逃げた。
逃げて、逃げて、逃げのびた。
夜の帳が段々明けてくる頃、天敵から岩場の影に身を隠していた雄鶏はゆっくり起き上がり、その岩場の上に立って眼下に拡がる山々の風景をじっと見詰めていた。
やがて・・・
遥かな山脈の向こうから、眩い光を放ちながら大きな太陽が昇っていった。
その余りにも美しい朝焼けに、雄鶏の目から一筋の涙が溢れた。
・・・何で人間は、僕ら雄を皆殺すんだ・・・?
・・・同じ『ニワトリ』なのに・・・?
・・・せっかく産まれてきたのに、この綺麗な情景を見る事も無く、死に逝くなんて・・・仲間達よ・・・
・・・僕だけ逃げのびて、本当にごめんな・・・
・・・僕は、君達の分まで生きのびてやるからさあ・・・!!
雄鶏はそう思うと深く深く息を吸い込み燃える朝焼けに向かって、死んでいった雄のヒヨコ仲間そして、鳥インフルエンザの犠牲になった雌鶏達や渡り鳥達のいる天国へ向かって大声で鳴いた。
こぉけぇこっこーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
~逃げのびろ!オンドリ~
~fin~
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