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『雄』のヒヨコは走った。
死物狂いで走った。
『悪魔の』養鶏場から、逃れようと走った。
何が何だか解らないまま死んでいった、無数の仲間達の無念を背負い・・・
たった1羽生き残った『己』への虚しさを振りきり・・・
ぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよ!!
山を駆け、川を渡り、谷を抜け、野を駆け、車がひっきり無しに通るアスファルトの道路を死物狂いに走り抜け、
何処までも何処までも何処までも何処までも・・・
猛禽やカラス、キツネやテン等の天敵の襲撃も振りきり、
何処までも何処までも何処までも何処までも・・・
ぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよぴよ!!
やがて、雄のヒヨコは段々大きくなり、
黄色い身体は白い羽根に、
頭には赤い鶏冠が生えてきた。
こっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっ!!
『雄鶏』は、逞しい黄色い脚で大地を踏みしめ、宛の無い道筋を駆けていった。
「今、自分だけが、あの『死』から逃げのびている・・・!
そして、今僕は・・・!!
こっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっこっ・・・」
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