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スマホ画面から顔を上げて、部屋の壁掛け時計を見る。
現在の時刻は午後六時三十一分。
スマホでも時刻は確認できるが、ついクセで時計を見てしまう。
んむ。
いま出掛けると夕飯食いっぱぐれるなー。
我が家の夕食は七時前後。そろそろ母が夕飯支度のフィニッシュに差し掛かる頃だろう。
我が家のルールその《一》。
お夕飯時までには帰ってくること(基本)。
なので、父もそろそろ帰ってくるだろう。
んー………………。
夕飯、姉さんに持っていくかな。
あの人、料理してるのかどうかあやしいし。
かといって料理が出来ない人でもないが。
むしろ何でも出来る方だ。
ただ、やらないだけで。
そうと決めて僕は制服から私服に着替えて、一階に降りた。
予想通り、母は総仕上げにかかっていた。
「母さん。悪いけど僕、姉さんの所に行ってくるね」
「あら、そうなの? もう少しで出来上がるけど……なんなら食べてから行ったら?」
「そうすると時間、遅くなっちゃうよ。それで、その、持っていこうと思うんだけど」
僕の言葉に、母は察したのか、にっ、と笑った。
「用意するわね。ちょっと待ってて」
言って、母は食器棚の上からバスケットを下ろすと、手早く夕飯を中に収めていった。ちなみに、本日のメニューは煮込みハンバーグだった。
サイドメニューまで収めてバスケットの蓋を閉めると、「はい」と僕に渡す。
「後でどんな様子だったか教えてちょうだいね」
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