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「なんのなんの、これが図書館で働く者の仕事じゃからの」
館員は、ほっほっほ、と笑った。
「それじゃ、失礼します」
「気を付けてな」
見送ってくれる館員に再度一礼してから、僕は郷土資料室を後にした。
「あれ? ちぃ?」
一階に降りるため階段を下りかけたところで、声をかけられた。振り向くと、自習室の方から友人がこちらへ来るところだった。
「んお? なんでお前がここに?」
思いがけない相手に僕は驚く。
「いや、俺だって図書館くらい利用するわ。ちぃこそなんで図書館に?」
友人は言いながら僕と並んだ。そこから、一緒に降りる。
「姉さんのおつかいだよ。調べ物してきてくれって言われてさ」
僕がそう言うと友人は郷土資料室を見て察したようだった。
「…………ちぃの姉ちゃんて、そんなに人使い荒かったっけ?」
そう質問してくるのは、この間のことがあるからだろう。
「ん~、どうだろう。おつかいに出されんのってここ最近だし」
それまではむしろ──まぁ、時々、夕飯を一緒に食べてはいたけれど──会う回数自体は少なかったし、今日は流れでおつかいに出されたけれど……そもそも一昨日みたいにメールで呼び出してまで人を使うようなことは……これまでなかった。
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