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「…………もしかしてさ、ちぃの姉ちゃん、寂しいんでないの? うっ……わ、あっちー」
図書館を出た途端に襲ってきた湿度の重さにげんなりしながら友人はそう言った。
「は?」
思わず友人を見る。
「いや、だからさ、ちぃの姉ちゃん、独り暮らしだろ? 寂しいから、おつかいと称して弟のお前を呼んだんじゃないかなーっと」
思いもよらない友人の言葉を頭の中で反芻する。
寂しい?
あの姉さんが?
……………………。
いや。
「それはないな」
僕は首を振った。
もともと、用事がないと連絡の一つも寄越さない人だ──むしろ、こちらからの連絡に応じない時さえある。尚且つ、その着信履歴やメールを後で確認しているはずなのに、折り返しの連絡すらしないのだ。
そんな人が──寂しいという理由だけで、人を呼び出すとは考えにくい。
「そうかなぁ…………」
友人は納得いかない様子で、そう呟いた。
初夏というには暑すぎる気温の中を、駄弁ることで紛らわしながら歩く。
と。
かっかっかっ かっかっかっかっかっ
どこからか硬質な音が聞こえてきて──
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