本日の“おつかい”です。

　アップダウンの激しい道を歩くこと二十分弱。
　鬱蒼と繁る木々を有する山を背に、僕らの祖父母の家ーー現在の姉の住居はある。
　その、玄関前に立つ。
　祖父母が亡くなってから空き家であったのを姉が『本家』から強奪した、と親戚間では噂されているがーー果たして。
　確かにあの人ならやりかねない気もするけど。
　…………というかやるな。やるわ。あの人。
　固執というか執着というか。
　異常な迄にこの祖父母の家に拘ってたし。
　小学生の時は毎日学校帰りに寄り道していたり、中学生の時なんか祖父母が亡くなって『本家』から立ち入り禁止とされていたのに不法侵入してまで入り込んでいたし、高校生になってからは座布団やらクッションやら食べ物飲み物を持ち込んで居座っていた。当然、『本家』からのお咎めもあったらしいが、本人意に介さずであった事と放っておいても害はないと言う判断が下されたらしく、『本家』はそれ以上は何も行ってこなかったらしい。社会人になってからはというとーー
　あれ？
　そういえば姉さんが引っ越したのって、社会人になってすぐだったかも？
　ふと、思い至る。
　もしかして、小学生の時から計画してた……？
　祖父母の家を手に入れるーー強奪することを？
　まさか、と思いながらも現状、至っている結果を見るとそう考えてしまう。