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『──ある日、宮司が夜遅くまで起きていると、どこからか猫の声が聞こえた。野良猫が近くまで来ているのだろう、と思って特に気に留めなかったが、しばらく経っても猫の声は一向に止まない。仕方なく宮司は外に出て辺りを見回したが、猫の姿はない。はて、と思って声のする方向を探ってみると、どうやら鳥居のある方向から聞こえる。宮司が鳥居までいくと、その下の階段に蹲るものがあり、その傍で生後一週間と経たないであろう仔猫が鳴いていた。その時、宮司は自分の目に映るものの違和感を覚えた。宮司は近付き、蹲るものが何であるかを確認した。それは、仔猫の死骸であり、鳴いていたのはその死骸の猫の霊であった。宮司はその変わり果てた姿を憐れに思い、死骸を手拭いで包んで拾い上げ、手厚く弔った。が、その霊は宮司になついてしまった。困った宮司は、御神木にする予定であった木の下に、猫に見立てた石を埋め、御神木の守り手にした──』
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