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マンションへの帰り道。行きはいつも通りの朝だったのに、帰りはこんなに最悪な気分で歩いている。
ふらついた足元は思う通りに動いてくれず、本当に僕の足なのか? なんて不思議に思いながら下を向いてみると、気持ち悪くなって僕は慌てて空を見上げた。
薄っすらと星が瞬いている。秋口になり、空気が澄んだお蔭か、前回見上げたときより星の輝きが強くなっているようだ。
誰かと付き合った時、別れた時、そんな時にやっと思い出す星の存在。今見てるのはロマンチックな方の理由じゃない。
『ドンッ』
「って……」
「あ、ごめんなさい」
そんな足取りで歩いていたら人にぶつかる、なんて普段の僕なら分かっていたはずなのに、お酒の力は思考回路を弱くする。咄嗟に謝りながら胸元にぶつかった相手を見ると黒髪の男の子だった。
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