プロローグ

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「いたた……」  結構がっつりぶつかったらしく、揺れた頭にクラクラして少し屈んでしまう。 「ってーな、この野郎!!」  激しい怒鳴り声に驚いて顔を上げると、だらしなく背広を着崩したサラリーマンが鬼の形相で僕を見ていた。 「すいません……」 「どこ見て歩いてやがんだ!!」  唾を飛ばしながら怒鳴る様は、明らかに……酔っ払いだ。しかも僕と違って相当酔っているらしく、顔が変に赤らんで目が据わっている。  酔っ払いが酔っ払いにぶつかって怒られている……。情けない。そしてヤバイ……。今は走って逃げれる気がしない。  とりあえず謝るしかないか……。  僕はクラクラする頭に手をやりながら立ち上がって男を見た。ちょっとだけ、見下げる形になってしまう。
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