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倫子は自宅に戻ろうと電車に乗りつつ、ショックで何も考えられない。ふと、気分転換にいつも降りた事の無い駅に降りてブラついてみよう、と思い立った。
そこは駅からすぐの所ががショッピングモールになってた。そこへ行こうと歩みを進める。…すると、ショッピングモールの一階のオープンカフェに…
「一華? ミカエルの奥さん?」
二人が仲良くお茶しているではないか。それも、手帳を片手に持った黒髪短髪碧眼のやたら美形の男と一緒に…。倫子はその男に一瞬で目を奪われた。…なんて、浮世離れした綺麗な男…。神秘的だわ。一華の彼かしら? まさか、夫? そこまで考えると倫子は
「よし! 一華から奪ってやるわ!」
と決意した。やはり人のモノを奪うのは辞められない。それは媚薬のように私を骨抜きにする…。まずは彼に近づこうと歩き始める。すると
「私に御用ですか?」
と背後から甘く囁く声がする。ビックリして振り返ると、そこにいたのはあの碧眼の神秘的な美形…。いつの間に?
「一華から話は聞いている。瑠華を傷つける事は許さない。そして私は一華の恋人でも伴侶でも無い」
そう囁くと倫子を背後からそっと抱きしめた。倫子はもうメロメロ状態である。
「我らの魔界へ来るか? そこは背徳、裏切り、嫉妬、恨み、憎しみ、殺意、怒り…ありとあらゆる負のモノで満ち溢れている」
と甘く囁く。だが、倫子の脳裏には悪魔や鬼や妖怪のようなもの達が蠢く地獄のような場所が浮かんだ。恐ろしさに声も出せない。
「中途半端な悪では生き抜けない。下級悪魔に食い殺されるだけだ。サッサと現実に戻れ!! 瑠華と一華には二度と近づくな!!」
鋭くそう言い放つと、
「失せろ!」
と言いつつ彼女から離れ、一華達の元へ戻って行った。その一部始終を、一華は冷たい目で見ていた。向かい側の瑠華と楽しく話しながら…。瑠華は、男と倫子はちょうど背後の位置なので気付く事なく。
「お帰り、凌駕さん」
一華は笑顔で彼の名を呼び、
「早かったのね」
と瑠華も彼に微笑む
「雨が降りそうです。中に入りましょう」
と彼は二人を誘導した。
…部屋を出た時には止んでいた筈の雨が再びポツポツと降り始めた…。
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