第5話 媚薬のループ

2/3
45人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
ミカエルの会社までは、最寄り駅からタクシーで行く事にした。やだ、タクシーの運転手、私に一目ぼれ? 私をチラチラ見てるわ。電車の中でも乗客は皆私をチラ見。美しいって罪ね。 「あのーお客様」 あらナンパ? 残念、顔が好みじゃないのよね。 「値札が、その…」 照れ屋さんね。倫子はそう思いつつ、スカートについたままの値札タグを歯で噛み切った。 ミカエルの会社は最寄り駅から5分程で着いた。 「へぇー! 結構大きくて綺麗な会社じゃない」 倫子はタクシーから降りるなり思わず感想を口にする。すると突然背後から 「それはどうも」 と声がした。その声は、忘れもしない我が運命の君…倫子がウットリしながら振り返るより前にミカエルは彼女の前に立ち、怒りに満ちた表情で 「何しに来た!? 言った筈だ! 妻以外の女に興味は無い! と」 と言うと同時に倫子の髪を掴み、彼女の背後にある銀杏の木に彼女を押し当てた。倫子はあまりに乱暴な扱いにさすがにビックリした。 「もう一度ハッキリ言う。俺は、お前のようにビッチな女は、色んな男のモノを上と下の口で咥え込んでいて不潔で下品にしか見えんのだ。汚らわしい! 二度と傍にくるな!」 と容赦なく言い放つ。…そんな! 私テクは自信あるのに…それにアソコはよく締まってキツイくらいだ! 評判なのに…いつも清潔にしてるのに…。倫子は泣きたくなった。 「そういう問題じゃねーんだよ! 可哀想にな、お前。父ちゃん母ちゃんに教えて貰えなかったんだな。幼稚園の先生、小学校中学校…学校の先生。親戚、誰からも…」 とミカエルは蔑んだ目で彼女を見ると、 「だったら教えてやる! 人のモノは盗ったらいけません。それは犯罪です。それは悪いことです! …よく覚えとくんだな。サッサと現実に向き合え! 可哀想なのは子供達だろ! 旦那もお前が選んだんだろ! 不倫略奪で向き合いたくない現実からいつまでも目を背けるな!! それにな、人のモノ盗ったって、お前の父ちゃんは手に入んねぇんだよ。言い加減気付け!」 ハッキリとゆっくり言い聞かせるように言うと 「二度と近づくな!!」 と告げると漸く倫子の髪を離し、会社へと向かって行った。倫子は、崩れるようにして座り込む。そして 「疲れた…もうイヤだ…」 と呟いた。 「あの男だけは、辞めときなさい」 そう忠告した一華の声が蘇った。image=503303374.jpg
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!