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彼らが帰った後、
一華はお客様が周りに居ない事を確認して
あたしの傍にいきなり近づくと、
「倫子、悪いけどあの男だけは辞めときなさい!」
と冷たい視線で私を鋭く見据え、
声を下げてドスを効かせて
そう言ってくるじゃない!
どうしてバレたのよ?
そんな素振り見せなかった筈よ!?
焦る私に、
「私には分かるのよ。
あなたの本心が。
もう一度言うわ。
あの男は諦めなさい。
あなたが後悔する事になるわよ」
と追い打ちをかけてきたわ。
何なのよ?
そんなにラブラブなの?
なら落とし甲斐あるじゃない!!
…それに会社経営者でしょ?
奥さんの他にも沢山女いるに決まってるわ。
その中の女より、
奥さんよりも誰よりも
私のが優秀だと知らしめてやる!
「私の言う事、聞こえなかった?
あの男にちょっかい出したら、
泣きを見るのはあなたよ。諦めなさい!」
な、何?
私の心が読めてるの?
…こ、怖い…。
この女の目、
黒目がちで澄んでいて、
じっと見ていると吸い込まれて
思わず洗いざらい白状したくなる…
生まれて初めて人に恐怖を感じたわ。
この女、何者?
「…それに、瑠華を傷つけるような事したら、
この私も許さないわ。
どんな手を使っても、
必ずあなたを阻止するわよ。
…これを機会に、馬鹿な癖からは足を洗う事ね」
冷たくそう言い放つと、
「いらっしゃいませ!」
とニコやかに来店したお客へに声をかけ、
売り場の中央へと戻った。
気が付いたら、
全身冷汗で濡れていた。
…弓倉一華…あんた、何者なの?
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