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第3話 ハンターの血が騒ぐ
「お前なぁ、火に油注いでどうすんだよ?余計厄介な事になりそうじゃねーか。あー言う勘違い馬鹿女は、放置プレイが一番効くんだよ。第一。俺が瑠華以外の女に目を向ける訳が無いだろう」
ミカエルは呆れたように一華の頭を軽く叩く。
「ごめーん、つい…。ミカエルが瑠華一筋なのは分かってるわよ。でもさ、瑠華の事考えたらさ…気付かせるたくないじゃん、なるべくなら。だから、水面下で阻止出来たらな、て思ってさ。とにかく、倫子には気をつけてよ!」
一華はそう言ってミカエルを見つめた。
「分かったよ。注意しとくよ」
…ここは一華が勤めるデパートからほど近い森林公園である。あれから一華は、倫子の事をすぐにミカエルに伝えた。たまたま、瑠華が一華に約束の物が出来たから渡して欲しい、と言われた事もあり、一華の職場の昼休みにミカエルが出向く事になったのだ。
ミカエルはフッと笑顔になると、
「一華、いつもありがとな、アイツの為に」
と優しい口調で言った。
「だって、瑠華は私の大切な親友だもの。ずっと、幸せでいて欲しいわ。あなた達二人には…」
そう言って一華は、遥か遠くを見つめるような眼差しで穏やかに微笑み、
「瑠華、益々綺麗になってくわね。ちゃんと愛し愛されるバランスがしっかり取れているのね」
と続けた。ミカエルは照れたように笑った。
「あ、そうそうコレコレ、瑠華から一華に渡せ、て頼まれたやつな」
と白地にピンクの薔薇の花が描かれた手提げ袋を一華に手渡す。一華は「有難う」と受け取りつつ、
「これを瑠華に」
と小脇に抱えていた淡いオレンジ色の手提げ袋をミカエルに渡した。
「おう!確かに受け取った!お前たちのコラボ、楽しみにしてるぜ!」
とミカエルは笑顔で答え、駐車場へと向かう。
「有難う!瑠華に宜しくね!約束通り、来週水曜日行くから、て伝えといて!」
と一華はミカエルに手を振った。ミカエルは笑顔で振り返り、右手を挙げて答えた。
…一華と瑠華のコラボ…それは小説家である一華と、漫画家である瑠華の合作。ストーリーは二人で考え、一華が書いた小説を瑠華が漫画にするのだ。一華も瑠華もその原案をミカエルに託したのである。ミカエルから受け取った手提げ袋を大切に持ちながら、一華は職場へと戻っていった。
その一部始終を、木陰から見ている人物が居た。…そう、大崎倫子である。
「へー、一華。なるほど、そう言う事ね」
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