ネコと私と。

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「ニャア~! ニャア~!」 「うぅ……ん」 「ニャアァァァァァァ!」  耳元で、あらん限りの声を振り絞るような鳴き声が聞こえる。    なによぉ、また起こしに来たのぉ?  なんでいつも私のとこに来るのぉ?  夢と現実の両方に足を突っ込んでるような、あいまいな覚醒状態の中、私は枕元のスマートフォンに手を伸ばして、ホームボタンを押してみた。  時間は朝の五時半すぎ。起き上がるには早すぎる。  どんだけ早朝よぉ……まだ眠いんだからぁもう……寝るぐぅ。  毛布で顔を隠し、再び夢の世界へと両足を突っ込もうと試みた。  しかし、鳴き声の主はそれを許してくれるはずもなく。 「ンニャアァァァァァァ!!!」  耳元に叫び声。  それから、バシバシと頭を叩かれた。  最初はぷにぷにの感触だったのが、すぐに鋭い爪に変わる。  起きろ。絶対起きろ。何としてでも起きろ。  鳴き声の主の強硬な主張に、私はついに根負けして跳ね起きた。 「っだぁ~! もうっ! 起きればいいんでしょ、起きれば!」 「ニャアッ!」  当然だこのやろうという顔で、私を起こした鳴き声の主はピョコンとベッドを飛び降りると、すぐに部屋の扉――キャットドア――をすり抜けて階段を降り始めた。  それから、『ニャッ。ニャッ』と、掛け声交じりに猛スピードで階段を降り切ると、振り返り催促するように再び鳴いた。 「はいはい、今いくから待ってよぉふあ~!」    睡眠時間を削られて、欠伸が止まらない。  眠気で体はフラフラするし、暖房の入っていない家の中は寒いしで、ボーっとしてしまう。  それでも、かの彼の要望に背くことなどできやしない。  なんとかキッチンにたどり着いて、キャットフードの袋を取り出し、お皿に入れた。  一秒前まで必死に鳴いていた彼が、すぐさまそのお皿の中に顔を突っ込む。 「ふわぁ……もっとさぁ、ちゃんとゆっくり食べなよ」  カリカリ。ングング。  慌てて食べるその背中をそうっと撫でると、少し落ち着いたのか、高く上がったままだったお尻がゆっくりと床に下がるのが見て取れた。    今のうちに戻ろ。  気づかれないようソロソロと歩き出すも、足元にスリリと毛皮の感触が。 「え~? もう一人で食べてよぉ」 「ニャウゥン……」  くそう、こんな時ばっかり妙に可愛い声出しやがって、愛いヤツめ!
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