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目が覚めた。
夢の内容がいろいろおかしかったことは置いておいて、問題は異常な痒さと暑さ。
ぶううううううううん
頭より先に体が反応して、手がぺしぺしと体を叩く。
夏の風物詩である蚊だ。夢の中の虫は蚊だったっけ?どうもよく思い出せない。
そういえば。
・・・・・・・・・・。
昨日エアコンが止まったんだっけ。
俺は焦って窓の外を見る。真っ暗だ。光るデジタル時計は2時を指していた。
ぶううんぶうぶうぶうううん
「・・・うざい」
音から見当をつけて、周りをぱちぱち叩く。
音はやむ気配がない。
俺は銃を構えた。百パーセント空気製のエアー銃だ。
「ズバババンズバババンズババ」
わかってるさ。俺が寝ぼけていることなんて。
痒い。
がりがりと身体中を掻く。部屋着の下まで手を突っ込んでひたすら掻く。
ああ。
「疲れた・・・もうイヤだ・・・」
しばらく体中を掻くことを続行した。蚊に刺されなんて掻けば掻くほどひどくなるのは知っていたけど、それでも掻くのはもはや人間の本能だ。
長い時間がたって、俺は思いついてしまった。
「ムヒだ」
そうだ、確かどこかにムヒがあった気がする。ムヒというのは、知る人ぞ知る、真夏の救世主であり、超高級品。だったと思う。
電気をつける。まぶしさに目をしぱしぱさせる。
周りにイルカが多すぎて死にたくなった。間違えた。イルカではない。周りにいる蚊が多すぎて死にたくなったのだ。
しかし、夏の救世主を探すのは難航した。苛立った俺は、家じゅうの棚という棚をひっくり返して捜索する。一人暮らしだから、怒られる心配はない。
「うるせえぞてめえ!」
・・・隣の部屋のおじさんに壁をバンバン叩かれる。現実は厳しい。
デジタル時計が三時を回った時、俺は絶望の渦の中にいた。
「・・・ない」
みんなのヒーローで救世主で超高級品であるムヒ様は俺なんかのところに現れてくれないのか。
そこで俺は一大決心をした。
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