真夏の夜

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 まだ日も出ていないし面倒くさいことこの上ないけど、コンビニにムヒと殺虫剤を買いに行こう。  装備は古着のTシャツにジーパン。おととし買ったビーチサンダル。それに百パーセント空気製のエアー銃。お供は二人の野口英世。冴えない腐れ大学生の平常装備だ。  人気のない住宅街の中で夏虫の鳴き声。  リンリンリンリン  ころっころっころっころっころ  ぶうううんぶうんぶうううん  部屋からまっすぐに俺のお供をしてきてくれる忠実な蚊たち。俺は容赦なく退治する。  コンビニに入るといつも通り店員さんが挨拶をしてくれる。 「いらっしゃいま・・・?!」  レジに立っている男が驚愕した表情で俺を見つめる。全身蚊に刺され、さらに蚊にまとわりつかれた男なんて見たくないのはわかる。俺も今、自分の姿を見たくない。 「お、お客様。当店蚊の入店はお断りしていまして・・・」  知るか。俺には関係ない。  医薬品のコーナーに行く。えーと、ムヒムヒ。あ、あった。  その時だった。 「蚊を出ていかせられないなら、あなたが出て行ってください!」 「え?」  俺はあっという間にコンビニから放り出され、ばん、と扉を閉じられた。  こんなことって・・・。  ぶんぶんぶんぶんぶううん  しばらく俺は呆然と医薬品コーナーのあたりを見つめていたが、こんなことをしていても仕方ないと思いなおした。  別のコンビニに行こう。  そして・・・。
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