真夏の夜

5/5
前へ
/6ページ
次へ
 三軒ものコンビニから強制退場させられた俺は、なすすべもなく道端で呆然としていた。  ぶうううんぶううんおまえ終わりだぶううんぶうん  いっこうに立ち去る気配のない蚊たち。  なんだかもう体に力が入らなくなってきたぞ。  その時、暗い路地を、一筋の明かりが照らした。夜が明けたのだ。もう朝なのだ。真夏の夜ではなく、鬱陶しい真夏の朝だ。  どこからか音楽が聞こえてくる。 あぁたーらしーいーあーさがっきた きぃぼーおの、あーさーぁだ  ラジオ体操か。まだ朝の五時前だったような。最近の子供は朝が早いのか。それともこれは俺の幻聴か。 よろこーびにむねおひーらけ おぉぞーぉらあーおげーぇ  俺は道端にひざまずくと呟く。 「パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ・・・。なんだか、とても眠いんだ・・・。パトラッシュ・・・。もうイヤだ・・・」  新しい朝に吸い込まれるようにして、俺の意識がフェードアウトする。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加