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「え、あ、え?リア………」
「リアリティーだよ。お前の書く漫画にはどれもこれも決定的にそれが欠けてるんだ。
たとえば今回の漫画の設定な。
悪い怪人がやって来て、地球を滅ぼそうとめちゃくちゃやりはじめる。その過程でいろんな物が壊され、いろんなヒトや動物が死ぬ。
ざっとこんなもんだ。細かいストーリーとか主人公の事はこの際どうでもいい。
あと、ストーリー自体のリアリティもどうでもいい。
主眼は、こいつら『死に役』がどうやって死んでいくか、って所だからな。そんでもって問題は、死にかたのリアリティーだ。」
内蔵の類いを腹にしまいこんだらしいアメリカンショートヘアは、破壊されたビルの一角に腰かけて、偉そうにふんぞり返る。
「俺がさっき枠外に放り出した、人間どもの残骸はまあ、いいわ。
町で人間が死ぬのは、そりゃあ人間の構造物の間での出来事なんだから、あり得ることだろ。
んまぁ、それでも、そこのジャグリング途中に死んだ大道芸人の指なんかは、不満に思うところしきりだろうけどな。
せめてジャグリング棒の一本でも握らせていりゃあまだマシだったものを………手袋程度で済ませやがって。
いいか?ここに山にされて積まれてる連中も、俺も、別にこの物語の中で生き続けたいわけじゃないんだ。
俺らは死ぬために描かれてこの漫画に生を受けた。だから、それ相応のな、この漫画にとって有益である死にかたをしたいと願っているわけよ。
今回、俺もこのジャグリング指も、悲惨な死にかたをするってことでここのコマに書かれて生まれて、それでほれ、こんな風に死んだ。」
傷口生々しい腹から、まるでポケットから財布でも取り出すように腸を掴み出すアメリカンショートヘア。
僕が自分で書いた絵ではあるが、動き始めるとまるで別物のように、気持ち悪さの類いが倍増する。
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