メイショウハヤオウ・ねこじゃんイベ

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「まあ、何だ。グラウンドで死ねれば本望、なんて言う野球選手がたまにいるが、俺らもよく似たような信念を持ってる。 死に役って種類の登場人物に生まれたからには、それ相応、読者にショックを与えるような見ごたえのある死にかたをしたいと思うわけよ。 それが、何だぁ?このクソコマは。殺された連中のこれまでのストーリーやら、そこにいた理由やら、何でこんな不運に見回れたのか、本人の気持ちとか、 まるで考えてねぇから淡白に過ぎるだろうが。あ? どうせ単純細胞で筆だけ達者なお前の事だろうからよ、猫ってったらなんかそれらしいアメリカンショートヘアの資料引っ張ってきて適当に踏み潰させて、可愛いものがあっけなく潰れる悲しさで恐怖頂戴気持ち悪さ頂戴しようとしたんだろ? まぁー、冗談じゃねぇって話だよな。 じゃあ聞くけどさ、一体どういう状況が重なって俺みたいな毛づやのいい良血のアメリカンショートヘアがこの大都会の交差点のど真ん中にいるんだよ?デフォルトの猫引っ張ってきたから首輪もついたまま。要するに飼い猫の体だしよ。それでいて回りに飼い主の部分遺体を書いてる訳でもねぇしな。 このジャグリング野郎もおんなじこと言ってやがるよ。交差点の真ん中で大道芸人やるやつなんていねぇし、せめて道具の破片でもどっかに書けって。 いいか、チョイ役だからってバカにしてんじゃねぇよ。俺らここに至るまでにそれぞれ事情も理由もあるべきなんだよ。お前がそれをただ横目に流される程度のものにしか考えてないからよ、え?てんで現実感のねぇ味気ない漫画になっちまってンだ、わかるか?」 機関砲の弾みたいに浴びせられる批評と批判の嵐に、 僕はその言葉の意味の半分も飲み込めないまま、 しかしそのアメリカンショートヘアの言わんとせんところの核の部分だけはわかって、 それでいてまだなにも言い返せもせず、賛同もできず、ゆえにもちろん反省もできず、 ただ無言でデスクに向かい、奇妙に動くそのコマ割だけを見つめることしかできなかった。
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