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あんまり目は良くない僕だが、遠目でもそれが何者かを確認することはできた。
大きく翼を広げて、戦闘機のようにずらりと編隊を組んだカラスの大群。
だが、その翼や尾にはむしりとられたような傷がつき、中には頭や足がえぐりとられた奴もいる。
とても飛行に十分な姿ではない、というか生きるに無茶のあるそいつらに、
だが僕は確かに見覚えがあった。
これは、物語序盤で僕が初めて怪人の被害者として描いた、貪られたカラスたちーーー
「こいつらはみんな、品のいい山のハシブトカラスたちだ。なぜそう断言するかというと、お前が資料として引っ張ってきたのがそいつらの写真だったからだ」
脳にダイレクトに響いてくる声がある。
それがアメリカンズタボロと同じ声だと認識するのに大して時間はかからなかった。
そう、これらは確かに、子供鳥類大図鑑から引用してきたカラスをベースに書いたカラスたちだ。
物語の最初のコマ、ゴミを漁っているところを逆に食われるという、世の無情を書いたつもりで僕が満足していた、あのーーー
「こいつらは下孅な人間の廃棄物など漁らずとも、自分達の力だけで立派に生きていける誇り高き山ガラスだった。その見た目の差は、普通の町ガラスと比べれば一目でわかる。毛づやに差がありすぎるからな。
だが、お前はそんな山ガラス達にゴミを漁らせ、
挙げ句一歩人間が近づいただけで逃げ去るくらい繊細かつ敏感な警戒心を持つ彼らを、
アッサリと怪人に捕まえさせて、食べさせた。
リアリティーのない間抜けな死なせ方をしたんだ。」
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