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アメリカンズタボロの声は「だから怒ってる」と響くと、その後しばらく断絶した。
いや、断絶したのかこちらに聞く余裕がなくなったのかはあまり定かではない。
山ガラスたちは、全くなんのためらいもなくそのままこちらに急降下してきて、そのくちばしをこちらに向けてくるのである。
刺し殺そうという彼らからの意志が明確に受け取れたとき、
僕はその場から全力で………高層ビルの立ち並ぶ横断歩道の方へと逃避した。
背後で石と石が衝突するようなガツガツ音に混じって、水袋の破けるような生々しい音がする。
かなりのスピードで突っ込んできた彼らが地面に打ち付けられて潰れた音だと想像するのは難しくなかった。が、それが正解か確認する余裕は僕にはない。
なにせ、富士川の戦いかと思うくらいに弓矢の如くカラスが突っ込んでくるのである。
当たれば貫通しての即死もありえる。命がいくつあってもたりないというもの。
僕は全力疾走で屋根を求めてビルへ転がり込んだ。何羽か防火ガラスに突っ込んできて果てる奴もいた。というかいっぱいいた。
僕の背後のガラスは、投げつけたトマトのごとき血糊でベッタリ、さながら現代の赤壁といった感じだった。
「カラスが突っ込んでくるなんて不自然だろう?」
声のする方を振り替えると、そこにはアメリカンショートヘアがいた。腸は仕舞われ、縫われ、もとに戻っている。
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