今回の任務報告書

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「ここだけの話、私は最期まで弟だけの味方、兄でいたかった。だが、私の足跡を辿ってしまえば弟の為という建前の殺人の連続だった。これでは弟に、アルバナの顔に泥を塗ることになってしまう。だから私は、その罰を自身の力で受けよう」 すると、男の周りで炎が爆発的に炎上しだした。焼身自殺だとすぐに分かった。近づこうにも炎の勢いが強すぎたし、なによりこちらも幾分の煙を吸ってしまい、意識が朦朧としていた。 その時だった。コンクリートの天井が破壊された。瓦礫が落ちてくる中で一緒に降りてきたアルバナの姿があった。 「てめえの事情に俺を巻き込むんじゃねえ」 アルバナは男の顔面に鋼の拳を思い切りぶつけた。炎の勢いがなくなっていくのを感じた。 私の意識はそこで途絶えた。 気がついた後でアルバナに聞いた話だが、アルバナは崩壊していくビルから逃れるために、私と男、エルモアを担いで脱出したらしい。その後、アルバナが鴉のメンバー、エルモアを捕捉したようだ。(私情ではあるが、彼には辛い思いをさせてしまったと後悔している) アルバナ曰く「あいつをあんな風にしてしまったのは、俺にも責任はあると思う」と言っていた。 彼は生まれつきの能力者だが、それを蔑む者に悩んでいた過去があり、それを慰めていたのは、兄であるエルモアだけだったらしい。そんな彼に突如、天災の如く、発火能力がついたらしい。彼はその能力を使いアルバナを蔑んだ者、最後には自身の両親を殺してしまった。 エルモア・テズナの身柄は政府の拘置所に収監。その後日、私は彼の面会に向かった。アルバナに行かせようと思ったが、今は第三者である私の方がいいかもしれないと思った所以だ。その時、アルバナに預かりものを託された。 面会時、エルモア・テズナは非常に落ち着いていていた。彼は前歴を話し、時折笑みを見せる時もあった。 面会終了時、私はアルバナからの預かりもの、金の腕輪を彼に渡した。これは普段アルバナが腰布の先に着けていたものだが、過去に家族4人が一つずつ身につけていたものらしく、彼は手で顔を覆い「やってくれる」と涙を流した。 最後に、エルモア・テズナと本名を公開したが、これはアルバナ・テズナという青年が彼との兄弟の復縁を宣言したためである。 終
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