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ま、まさかお誘い?
日の明るいうちにカナさんからお誘いかかるなんて!
「今行くから、もうちょっとだけ待って!」
ああ、じれったい。
ドリップ、もう、これでいい。
シンクにドリッパーをさっさと置いて、サーバーを保温。
今行く、カナ♪
あ、ますますゲンキに。
「……えっと」
カナさん、なに窓にへばり付いてるの?
窓際に寄せてあるベッドに、ちょこんと座ったカナさんが俺を振り返る。
「あそこ、見て」
マンションを囲むレンガタイルの塀垣の内側。
でっかいファンが回る、でっかい箱の上に。
平らな部分に虎柄と真っ白のダルマが二つ、ちょこんと並んでいる。
雪が乗って無いところを見ると、あそこ暖かいのかな?
身を寄せ合って、時々耳としっぽがフルッとしてる。
陽が射してきた。
天気回復しそうだな。
少しずつ雪も溶けるだろう。
雪が溶けても。
あいつらはあのままでいるのかな。
「よっこらせっと」
カナの横に。
あいつらみたいに。
ぴっとりくっつく。
「何?」
「あいつら見てたら、羨ましくなった」
「何それ」
そっとカナを抱き寄せ、囁く。
「初雪の思い出、塗り変えよう。
今日は。
二人して転んだ初雪記念日。
今日からは、それが花菜と俺の初雪の思い出だ。
……雪が溶けても、このままでいたい。
いつまでも、花菜と」
コツンと頭を預けてくる貴女に。
今度こそ唇にキスを落とした。
おしまい。
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