これが最期と決めてから

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二人とも私には聞こえないように話していたが、あるときから息子は小学校から帰って来る度に顔に痣をつけてくるようになった。 流石に気になって息子に問い質したが、息子は私に笑顔を向けて「早く仕事見つけてね」と悲しそうに笑った。 金をくすねておいて……とも思ったが見栄と虚勢で生きてきた私は「頑張るよ」と気楽に返事をした。 私は、そのとき働かなければならないと軽く思っただけだった。 しかし、しばらくして妻にも異変が起きた。 突然にパートを辞めたいと私に言い出したのだ。 私は、貯金もあるから辞めてもいいよと事も無げに言った。 その話は息子は聞いてはいない。 息子が寝静まった頃を見計らって私に言ってきたからだ。
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