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「ようやく、一歳だな」
はい、と僕は答えた。
自分の始まりを知っているひとがいるということは、何だかとてもくすぐったいことのように思えた。
来年も、彼は同じことを言うつもりだろうか。二歳の誕生日にも、僕はまだ彼の側にいられるのだろうか。
田植えの済んだ田んぼから、蛙の声がする。歌うように、叫ぶように鳴き続ける。
僕もあなたの誕生日が知りたいです、と告げると。もう忘れた、と彼はどこか照れたように目を逸らした。
end.
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