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「やっぱりカラスだけじゃ朝メシ足りないよなあ……」
グレンG。
紅蓮寺 優子。通称グレンG。ドラマー。
80キログラム後半の肉体を誇る大柄のイケメン女子高生――
すなわち、デブ・メガネである。
「このメガネ、美味いな」
しかし侮るなかれ、ただのデブ・メガネではない。
もともとは視力2.0の可憐な少女であったが、お寺の住職の娘として生まれた彼女は、生後三ヶ月でドラマーとして生きることを余儀なくされた。母親の叩く木魚のリズムを聴きながら育ったことで、打楽器の魅力に取り憑かれてしまったのだ。
やがて自宅に棲まう鎮守神に祈りを捧げ、彼女はその容姿と視力を引き換えに、唯一無二のドラミングセンスと退廃的な体脂肪をその身に授かった。
彼女はドラムという楽器を愛するがあまり、女を捨てたのだ。
「ぺっ。ごちそうさまあ……」
その演奏スタイルも破滅的有様で、どこから説明すればいいのか、まず、彼女は、ドラムスティックを持たない。
ドラムを、素手で叩く。いや、殴る。
ロータムを殴り、ハイタムを殴り、スネアを殴って、シンバルにヘディングする。バスドラムは優しくなでる。
その演奏スタイルがゴリラの生態に似ている、というようなところから、生物学者たちによって『ドラミング奏法』と名付けられた。ギャンブル好きの学者からは『台パン奏法』とも呼ばれている。
野生的な音楽性は、多くの若者たちを虜にする可能性を秘めている。このバンドで一番魅力的なのは、実は彼女なのかもしれない。
「おい、カップラーメン出せよ」
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